パルスレーザー堆積法
(Pulsed
[はじめに] 極限エネルギー密度工学研究センターでは、PLD
法を用いた材料開発を行っている。Ti-Ni-N、Ti-C-N-O、Cr-N-O、Cr-Al-N-O
薄膜等の切削工具のコーティング材や ZrMn2、TiFe
薄膜等の水素吸蔵合金の作製に取り組んでいる。また、Al2O3、AlN
等の高い熱伝導率を持つ超微粒子の作製も行われている。
[原理] 図
1 は PLD
法の成膜プロセスを示す。アブレーションプラズマは、レーザー光がターゲットに入射することで発生する。レーザー光とターゲットの相互作用は、レーザー強度、波長、ターゲットの吸収係数などにより大きく異なる。しかし、短波長のレーザーを用いた場合には吸収係数が大きいので、ターゲットの表面近傍でレーザー光のほとんどが吸収される。その結果、ターゲット表面の温度が急激に上昇し、アブレーションプラズマが形成される。プラズマ中に含まれるアブレーション粒子は、再結合や雰囲気ガスとの衝突・反応などにより状態を変化させながら基板へと移動する。そして、基板に到達した粒子は、基板上を拡散し、安定なサイトに落ち着いて薄膜となる。
図 1 PLD 法の成膜プロセス
[実験装置] 図 2 は実験装置の概略図を示す。レーザーは Nd: YAG レーザーを用いた。本装置は、電気光学効果 Q スイッチにより短パルス高エネルギーを発生させることができる。成膜は、波長 355 nm、パルス幅 7 ns のレーザーを繰り返し周波数 10 Hz で動作させて行った。チャンバーは、圧力が 1×10-6 Torr 以下になるまでロータリーポンプとクライオポンプを用いて真空排気し、その後に雰囲気ガスを封入した。レーザー光はレンズにより集光され、チャンバー内に導入される。ターゲットはレーザー光の焦点付近に 45°に傾けて設置し、基板はプルームに対して垂直に、ターゲットに対して平行になるように固定した。基板温度は、基板の裏側に設置したヒーターと熱電対を用いて制御した。また、超微粒子を作製する場合には、基板を設置せず、排気系統にフィルターを介することで超微粒子の回収を行った。
図 2 実験装置の概略図
[研究紹介]
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Cr-Al-N-O 薄膜
近年、Cr-Al-N
は切削工具のコーティング材として注目を集めている。これまでに我々は、Cr-Al-N
に酸素が固溶した Cr-Al-N-O
薄膜を作製し、この薄膜が高硬度で、耐酸化性に優れていることを明らかにした。
図 3 薄膜の硬度・弾性率の陽イオン組成依存性
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TiFe薄膜
水素吸蔵合金は、水素ガスと反応して金属水素化物を形成する合金で、合金の格子間に多量の水素を吸蔵することができる。TiFe
は、他の水素吸蔵合金に比べて安価であり、高い水素吸蔵能力 (1.8
wt.%) を示す材料である。TiFe の薄膜化はこれまでにスパッタ法やパルスイオンビーム蒸着法で行われているが、成膜後の熱処理なしに単相の結晶化した
TiFe 薄膜は作製されていない。
図 4 PLD 法を用いて作製した薄膜の XRD パターン
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AlN 超微粒子
AlN
は熱伝導率および絶縁性が高く、Si
と熱膨張率が近いことから Al2O3
に置き換わる高熱伝導性基板材料として期待されている。しかし、AlN
は難焼結性であるため、緻密な焼結体を作製するのが困難である。そこで、超微粒子の特徴の一つである低温焼結性を生かし、AlN
を超微粒子化することで、緻密な焼結体が得られるのではないかと予測した。
図 5 AlN 超微粒子の平均粒径の窒素雰囲気圧力依存性
[参考文献]
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平井
誠、鈴木常生、江 偉華、Constantin Grigoriu、八井
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K. Yatsui, T. Yukawa, C. Grigoriu, M. Hirai and W. Jiang,“Synthesis of
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C. Grigoriu, T. Yukawa, M. Hirai, K. Nishiura, W. Jiang and K.
Yatsui,“Synthesis of Nanosized Aluminum
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M. Hirai, Y. Ueno, T. Suzuki, W. Jiang, C. Grigoriu and K.
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M. Hirai, Y. Ueno, T. Suzuki, W. Jiang, C. Grigoriu and K.
Yatsui,“Characteristics of (Cr1-x, Alx) N
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T. Suzuki, H. Saito, M. Hirai, H. Suematsu, W. Jiang and K.
Yatsui,“Preparation of Cr (Nx, Oy) Thin
Films by
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M. Hirai, H. Saito, T. Suzuki, H. Suematsu, W. Jiang and K.
Yatsui,“Oxidation Behavior of Cr-Al-N-O Thin
応用研究トピックス
更新日:平成16年11月9日