プロジェクトリーダー:鎌土 重晴(Kamado Shigeharu) | |
最終学歴: |
地球環境問題から航空機、自動車などの輸送機器部品への応用が期待されている、金属材料材中で最も密度の小さく、資源的にも豊富(クラーク数8番)なマグネシウム合金のナノ・ミクロ組織制御による高性能化・高機能化および既存プロセス技術の最適化によるグリーンマテリアル化を目指した研究を進めている。その成果をもとに、2005年には高性能マグネシウム工学研究センターを設立し、現在も、文部科学省都市エリア産学官連携推進事業(発展型)「マグネシウム合金の次世代型製品開発」を始めとして、9件の産学官連携プロジェクトを進めている。本事業を通して、合金開発、プロセス技術の最適化のための基盤となるナノ・ミクロ組織の解析とその制御指針を確立し、その成果を高性能マグネシウム合金の開発と応用へと展開することにより、健全なグリーン社会の構築に積極的に貢献することを目指している。
1. 軽量マグネシウム合金の加工プロセスの最適化およびその高強度化
押出し、鍛造等の高温加工が可能なプレス機を用い,シートフレームやバンパー等,自動車用材料へ応用可能な加工条件の最適化およびその時効析出等を利用した高強度化を目指している。既に事業推進者らは熱間・温間加工時に生じる動的再結晶と動的析出あるいは化合物微細分散を複合的に発現させ、動的析出物のピン止め効果により結晶粒の粗大化を著しく抑制し、集合組織も制御することに成功し、その結果として延性を損なわずに高強度化を達成している。 (例:Scripta Mater., 61 (2009), 644, Acta Mater., 57 (2009), 5593, Scripta Mater., 61 (2009), 249).
2. 高強度・易加工性圧延用マグネシウム合金の開発とその圧延プロセス制御
自動車用ボディパネル材等の自動車部品の超軽量化を目指し、プレス等の成形加工が室温でも可能で、かつその後の焼付塗装時には素早く時効硬化し、高強度化が可能なユビキタス元素からなる汎用マグネシウム合金の開発を目指している。同時にその目的を達成するための結晶粒径、結晶配向等のナノ・ミクロ組織因子を制御する、素材製造プロセスとしての圧延技術の構築、プレス成形技術も、産学連携にて進めている。( 例:Computational Mater. Sci., 47 (2010), 919)
3. 汎用耐熱マグネシウム合金の創製
環境にも易しく、Al、Ca、Zn、Mnのような世界中のどこでも容易に入手しやすい汎用のユビキタス元素を添加し、結晶粒界に熱的に安定な高融点化合物、粒内に単層GPゾーンのようなナノオーダーの析出物を配置した組織を創り込み、エンジン回りにも適用可能な、耐熱マグネシウム合金の開発を目指している。(例:Mater. Sci. Eng. A, 380 (2004), 93).
4. カーボンナノファイバー強化マグネシウム合金の創製
自動車エンジンピストン等の往復運動部品、回転体部品に要求される耐熱性を満足する超軽量マグネシウム合金基複合材料の開発を目指して、カーボンナノファイバー(CNF)の複合化方法を検討するとともに、CNFの複合化に伴う強化メカニズムの解明を目指している。既にCNFにSi被覆を施すことにより、表面にSiCが形成され、マグネシウム溶湯との濡れ性が顕著に改善され、半溶融状態での撹拌によりCNFを充分に分散可能であること、その結果、高圧鋳造したままでも耐熱性が著しく改善され、さらに押出しを施すことにより、CNFの更なる均一分散化および結晶粒微細化が達成され、高強度化できることを明らかにしている。 (例:Scripta Mater., 60 (2009), 451).