事業推進者:植松 敬三(Uematsu Keizo) | |
所属:セラミックスサイエンス研究室 最終学歴: |
セラミックス製造プロセス科学の構築と、それを活用する超高強度スーパーセラミックスの創生を目指す研究を進めている。その基本的考え方は、破壊力学の基本どおり「粗大傷がセラミックスの強度特性を支配する」ことである。しかし研究の実施では、粗大傷を評価する適切な評価法がないことが障害となり、実際にこれを行うことはできなかった。そこで、まずユニークなアイデアに基づき、強度特性を支配する粗大傷を調べる評価法を整備した。つぎにそれらの評価法を活用して粗大傷の形成過程や、その特性に及ぼす影響を直接評価した。得られた結果は、例えば従来の根拠のない「神話」に反し、セラミックスでは粒径は強度と直接関係をもたないなど、しばしば常識を覆すものであり、世界的な注目の的である。
セラミックス中粗大傷を形成する原因は極めて多い。一つでも残ってしまうと、それが特性の支配因子となり、他の原因をすべて解消しても、大幅な特性向上は期待できない。これまでの研究から、従来の「技」に頼るアプローチではそれらの原因をすべて明らかにすることは不可能であり、製造を十分に制御したつもりでも数多くの粗大傷形成要因がそのまま残され、「期待したほど特性があがらない」結果となる。現在、粗大傷形成の原因を一つずつ確認し、それらを除く方法を調べている。例えば、下図は成形体の構造と焼結体の構造を調べた結果である。両者は非常に似ており、セラミックス中の粗大傷は成形体構造の不均質に起因することは明らかである。またこれらの傷が強度やとの変動と定量的関係をもつことも初めて確認している。これらの欠陥は従来の解析法では検出できず、従って研究すらできない。欠陥の除去により特性は着実に向上するが、粗大傷形成原因は極めて多種多様である。今は、従来の10倍以上強いセラミックスを目指して研究を進めている。
図1 成形体の構造と粗大傷 |
図2 焼結体の構造と粗大傷 |