プロジェクトマネージャー:小松 高行(Komatsu Takayuki) | |
最終学歴: |
酸化物ガラスは光ファイバーや各種ディスプレイ用の薄板ガラスなど最先端技術やデバイスを支えるキーマテリアルである。一方、ガラスは、SiO4正四面体などの短範囲秩序構造単位が不規則な繋がり方をした長周期性のない(反転対称性を有する)構造をしており、光変調や光スイッチング素子等の光波制御デバイスに必要なアクティブな光学特性(光非線形性/強誘電性)をガラスのままでは原理的に発現し得ない。この限界を打破し、ガラスにアクティブな機能を付与するためにはガラスと結晶のハイブリッド材料の創製が必要不可欠であるというのが事業推進者の基本的なコンセプトである。本事業を通して、新規な最先端機能性材料を開発すると共に、健全なグリーン社会の構築に積極的に関与して行くことを目指している。
1. 酸化物ガラスの電子分極率の解明
ガラスの電子分極状態は、屈折率や三次光非線形感受率と密接に関連しており、光学ガラスの組成設計に必須の情報である。我々は、ブルガリアのデミトロフ教授と共同研究をしながら、この問題に平均単結合強度などの概念を用いて様々な角度からアプローチしている。( 例:J. Appl. Phys., 105 (2009) 053105)
2. 光機能性ナノ結晶化ガラスの創成
ガラスの結晶化は核形成と結晶成長の2段階で進行する。これらの速度の制御とガラス系や組成の選択により個々の結晶粒をナノサイズ(˜10µm)にすることができる。得られたナノ結晶化ガラスは可視域で光透明性を示し、様々な光デバイスへと展開が可能になる。第二高調波発生や電気光学効果を示す新規なナノ結晶化ガラスが長岡から発信されている。(例:J. Am. Ceram. Soc., 92 (2009) 2924).
3. レーザーによる結晶パターニング
ガラスの結晶化は、通常、電気炉中での加熱により達成される。我々は、希土類や遷移金属イオンの非輻射緩和を利用した新規なレーザー誘起結晶化法を提案し、様々な機能性結晶のパターニングをガラス表面上に行い、結晶配向や光透過性を明らかにしている。この分野では、世界のトップランナーである。(例:Appl. Phys. Lett., 105 (2009) 053105).
4. 次世代リチウムイオン二次電池の開発
ガラスの結晶化を利用したリチウムイオン二次電池用の正極材料や固体電解質の開発に取り組 んでいる。例えば、次世代正極として期待されているLiFePO4は同組成でガラスになり、結晶化によって作製できる。通常の粉末焼結法で作製されたLiFePO4と較べて優れたサイクル特性等を示すなど、今後の展開に期待している。(例:Solid State Ionics, 178 (2007) 801).
強弾性体結晶ß’-(Sm,Gd)2(MoO4)3のレーザーによるガラス表面へのパターニング。強弾性体特有の自発ひずみにより結晶ラインは屈折率変化の周期構造を示す。(Appl. Phys. Lett. 2009年2月号の表紙に採用) |
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