事業推進者:大石 潔(Oishi Kiyoshi) | |
1986年3月 慶應義塾大学大学院工学研究科博士課程修了 |
ロボット機器のための燃料電池の内部インピーダンス同定に関する研究
直接メタノール型燃料電池(DMFC)は現在主流のリチウムイオン二次電池に比べ、約10倍のエネルギー密度を持っていることから,小型機器の駆動時間の増長や軽量化,更には地球環境に優しい省エネルギー電源として期待されている。しかしながら、燃料電池は、従来の電池に比べ構造が複雑化することや周囲の環境変化や構造体の劣化などの影響により特性が変動するという問題がある。そのため、様々な環境下で利用される小型機器やロボットへ安定したエネルギーを供給するためには、これらの影響を補償するような制御や電源の管理を行う必要がある。そのためには,DMFCの内部状態を把握しなければならない。これまでは,燃料濃度,温度,発電電力といったパラメータを用いて燃料濃度の制御などを行っているが,DMFCの内部インピーダンスを測定することでより多くの情報を得ることができる。電気化学分野では,電気化学インピーダンス法を用いて燃料電池の内部インピーダンスを測定しており,燃料電池の劣化なども,この手法により観測できることが報告されている。しかしながら,電気化学インピーダンス法は周波数特性分析器などの高価で大型な機器を必要とし,このような測定装置をロボットや小型機器に搭載することは困難である。
そこで本研究では,図1に示すようは小型で安価な汎用CPUを用いて内部インピーダンス測定装置を構成し,電気化学インピーダンス法と同等以上の精度と速度で内部インピーダンスを同定するシステムを開発する。これによって,インピーダンス整合法による最大効率電力制御法と内部インピーダンスの時間推移から経年変化を解析し、DMFCの劣化診断法を確立する。これによって燃料電池搭載ロボットの実現を目指す。
図1 測定装置の概略図 |