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規則GPゾ−ン形成型マグネシウム合金の加工熱処理条件の最適化

名前と所属


徐世偉 外国語アドミニストレータ:徐世偉(Xu Shiwei)

最終学歴:
2004年 中国ハルビン工業大学 金属材料学科 学士
2006年 中国ハルビン工業大学 材料学 修士
2008年 日本学術振興会特別研究員(DC2)
2009年 日本長岡技術科学大学 材料工学 博士(工学)
2009年 日本学術振興会特別研究員(PhD)
研究業績:
国際会議発表6回、日本国内会議発表8回
第一著者としてSCI公表論文7 編、関連SCI公表論文12 編
受賞:
日本国内学会1件、中国国内発表会1件、中国政府2件、国際会議3件

今までの研究 (2006年9月-2009年9月 日本長岡技術科学大学博士後期課程)

研究題目:「高温圧縮中のMg-9Al-1Zn (mass%)合金の動的組織変化とその組織制御による引張特性の改善」
通常、鍛造加工には加工性改善のために予め組織制御した押出し材が使用されるが、本研究では汎用マグネシウム合金の連続鋳造材をそのまま鍛造加工に使用し、その加工中の組織変化に及ぼす素材の均質化処理条件、ひずみ速度、加工温度の影響を詳細に調べ、その成果を組織制御へと展開し、マグネシウム合金鍛造材の高強度、高延性化を低コストで達成することを目指した。成果は以下のとおりである。
(1)AZ91合金およびそれにCaを1%添加したAZX911合金の連続鋳造材と均質化処理材の高温圧縮に伴うミクロ組織変化を、後方散乱電子回折法を用いて詳細に検討した。その結果、両合金とも粒内ではまず 圧縮双晶が生じ、その双晶内に 引張双晶が生じる二重双晶が形成され、さらに二重双晶内部でのすべり変形と動的回復を伴った転位の再配列により形成される小傾角粒界が大傾角化し、新粒が形成されるという 二重双晶を伴った動的な連続再結晶(CDRX)が生じる(Fig.1)。均質化処理により粒内の溶質濃度を高めた試料では、圧縮加工中に再結晶粒界にMg17Al12(β)相の動的析出も生じ、再結晶粒の粗大化が顕著に抑制される(Fig.2)。

Fig. 1 Inverse pole figure maps of as-cast AZ91 specimens after hot compression to the strains of
(a) 10% and (b) 30% at 300 ℃-0.2 s-1, and (c) their distribution of misorientation angles.

Fig.2 SEM image of homogenized AZ91 specimen after hot compression to the strains of 30% at 300 ℃-0.2 s-1.

(2) 圧縮材の再結晶組織に及ぼす圧縮条件の影響を調べ、温度が低く、ひずみ速度が大きいほど再結晶率は低くなり、再結晶粒径は微細になるものの、粒内の溶質濃度が高く、加工温度が低いほど動的に不連続析出するβ相の粒界ピン止めによる再結晶粒粗大化効果が顕著に現れるようになり、その結果、再結晶粒径は従来報告されているような温度補償ひずみ速度(Zener-Hollomonパラメータ)だけでは一義的には表せず、温度に強く依存する。
(3) 圧縮まま材の引張強さおよび0.2%耐力は低温圧縮中に多量に動的析出するβ相、再結晶粒微細化および強い底面集合組織の形成により改善され、T5処理材では圧縮温度が高くなるほど時効中に微細なβ相が多量に析出するため、引張強さおよび0.2%耐力とも顕著に向上し、鋳造材を用いても加工条件の最適化により既存の展伸用6061アルミニウム合金T6処理材に匹敵する引張特性が得られることを明らかにした。

これからの研究

本研究では、自動車用ボディパネル材等の自動車部品の超軽量部品の超軽量化および輸送機器部品用の高強度・耐熱マグネシウム合金の開発を目的として、プレス等の成形加工(圧延、押出しおよび鍛造)が容易で、かつその後の焼付塗装時に素早く時効硬化し、析出物・化合物の分散により高強度化が可能なマグネシウム合金の開発を目指す。さらに、表面品質、成形性、機械的性質等の特性改善のための結晶粒径、析出物・化合物の量および大きさ、結晶配向等のミクロ組織因子を制御し、輸送機器部品に必要とされる高強度・高延性・高耐熱化へ向けた組織の創り込みへの指導原理を導入し、素材製造プロセス技術の確立および最適かと展開する。