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低濃度有機性廃水を対象とした省エネルギー型排水処理システムの実用化に関する研究

名前と所属


高橋優信 研究アドミニストレータ:高橋優信(Takahashi Masanobu)

最終学歴:
2002年 長岡技術科学大学修士課程修了(環境システム工学専攻)
現在 東北大学博士課程在籍(土木工学専攻)
職歴:
2002年 (株)西原衛生工業所 現場担当
2004年 (財)ひろしま産業振興機構 広島県産業科学技術研究所 研究員
2006年 三機工業(株) 研究員
2009年 長岡技術科学大学 教育研究支援員

研究テーマ

低濃度有機性廃水を対象とした省エネルギー型排水処理システムの実用化に関する研究
国内において下水をはじめとする有機物濃度の低い生活系・産業系廃水の処理には,多くの場合,好気性微生物を利用した活性汚泥法が採用される。活性汚泥法は,比較的処理水質は良いが,所用動力の半分以上を占めるほど曝気エネルギーが莫大なことや,副産物として大量の余剰バイオマス(余剰汚泥)を排出するなど様々な問題が顕在化している。特にエネルギー消費については同時に大量の二酸化炭素を排出することになり,世界規模での懸案事項である地球温暖化にも加担している。一方,有機物濃度が高い食品産業等の廃水処理については,嫌気性処理であるUASB(Up-flow Anaerobic Sludge Blanket:上昇流嫌気性汚泥床)法が採用され,メタンガス回収による創エネルギー化や嫌気性微生物による汚泥減量化が図られている。しかしながら,嫌気性処理のみでは処理水質が放流基準に到達しないため,後段にエネルギー消費量の多い活性汚泥処理を設けることになる。未だ全体システムとして省エネルギー型の廃水処理技術は確立されておらず,本問題点の解決に取り組む必要がある。

研究内容

省エネルギー型廃水処理バイオリアクターの開発と新規処理システムの構築
DHS(Downflow Hanging Sponge)バイオリアクターは,有機物酸化や硝化反応に寄与する有用微生物を高濃度に保持できる高効率な新規廃水処理装置として開発し,実験により高い性能を有することを明らかにした。このDHSは,嫌気性処理と組み合わせたUASB-DHSシステムを構成することにより,エネルギー最小消費・低コスト型の廃水処理が実現できるものとして期待されている。実証実験による処理性能および寄与微生物の生態解析からシステム性能を評価・検討している。

低温環境域で適用可能な廃水処理システムの開発
通常,低温で嫌気性処理を実施した場合,常温や中温で廃水処理した場合に比べて,有機物除去が極端に低くなる。その原因は,嫌気性処理では最終的な有機物分解者が主にメタン生成古細菌であり,水温の低下に伴ってメタン生成古細菌が不活性化するためである。そこでメタン生成古細菌に代わる有機物分解者として嫌気性処理槽内で良く生育することが知られている硫酸塩還元細菌に着目し,硫黄サイクル活性型の排水処理システムの開発を進めている。硫黄サイクル活性型排水処理システムとは,嫌気性反応槽での硫酸塩還元細菌による有機物分解と,好気性反応槽での硫黄酸化細菌による硫化物からの硫酸塩再生を組み合わせたプロセスである。

 

実下水処理UASB-DHSシステムの実証実験装置

低温域で処理可能なUASB-DHSシステムの概念図