植物に多く含まれるセルロース系バイオマスからの燃料エタノールにおいてセルロースの分解が重要になります。セルロースはヘミセルロースやリグニンと複雑な構造をとっていることから、セルロース分解酵素(セルラーゼ)が大量に必要でその生産コスト及び糖化コストの削減が課題となっています。糸状菌トリコデルマ・リーセはセルラーゼを大量に生産しており、現在世界中で盛んに研究されています。これまで多くの研究が自然界で生育している環境とは異なった条件 (液体培養)でトリコデルマ・リーセを生育させて実験を行っていました。本研究では、自然状態に近い培養法である固体培養で生育させることにより、トリコデルマ・リーセが本来持つ力を引き出し、その力をセルロースの分解に応用することを目的としています。
現在進めている研究としては、固体培養条件で働くとされる転写制御因子の解析や固体・液体培養で発現している遺伝子をマイクロアレイやリアルタイムPCRで比較を行い、セルロース分解に関与する有用な固体培養特異的遺伝子の探索を行っています。また、取得された固体培養特異的遺伝子のプロモーター領域を変えることにより液体培養条件でも発現できるトリコデルマ・リーセの作出を行ない、糖化能力の向上を目指しています。

様々な方法を用いてトリコデルマを解析しています