研究アドミニストレータ:床井 良徳(Tokoi Yoshinori) H21〜H22.3.31 | |
研究領域 「ナノ材料合成」 |
近年、様々な形態や機能を有するナノ材料合成や応用に向けた研究の報告が多くなされている。特に、ナノ材料の合成手法においては、環境問題を克服した環境低負荷型合成プロセスの開発が急務となっている。
本研究では、「超低環境負荷型ナノ材料プロセス探索」「新規ナノ材料の合成」「ナノ秒領域における生成メカニズムの解明」に主眼を置き研究を行っています。
環境低負荷型ナノ材料プロセスの開発においては、エネルギー変換効率が非常に良く生成時に副生成物が生じにくく高純度のナノ材料を合成する事が可能な「パルス細線放電法」に着目し、物理的化学的な現象を動的に解析するための極短時間分解能計測システムを独自に構築し生成メカニズムの解明を行っています。
極短時間分解能計測システムによりパルス細線放電によって生成されたプラズマ/蒸気の観察を行ったところ、プラズマ/蒸気密度(Dexp)が実験パラメータである「細線に投入するエネルギー, Ec」「雰囲気ガス圧力, P」「金属細線の質量, m」に依存し、Dexp∝mPEc-1の関係がある事を明らかとした。さらに合成したナノ粒子のメディアン粒径(D50)がDexpに対してD50∝Dexp-1の関係、つまり粒径が密度によって決定する事が明らかとなった。これらのことから実験パラメータから合成されるナノ粒子のメディアン粒径の予測が可能となった。
酸化チタンナノ粒子の合成においては、DexpとPの制御により合成された粒子(ルチルとアナターゼの混合)中のルチル量(CR)がCR∝PDmPE-1に依存し、相の制御も可能である事を示した。
さらに窒素雰囲気中では作製が困難な窒化アルミニウムの合成にDexpを減少(化学的な反応性を高める)させる事で成功した。この知見を逆手にとりDexpを増加(化学的な反応性を抑制)させる事で化学的な反応性が高く作製に困難を極めるチタンナノ粒子の作製に成功した。いずれの場合においても金属単相から化合物単相まで同一雰囲気中での作製が可能である。
今後の展開
これまでの研究で、気体中での作製に関して多くの知見が得られた。今後は、得られた知見を基に通常の物理的気相法では困難な高密度媒体中などの新規ナノ材料合成場中(細線の直接加熱のためプラズマ/蒸気の生成において場を選ばない)でのナノ材料の合成、新たな合成手法の提案およびその生成メカニズム解明について行いたいと考えている。
図1 極短時間分解能計測システム |
図2 作製した(a)銅および(b)チタン ナノ粒子の透過型電子顕微鏡像 |