教育研究高度化支援員:橘 隆一(Tachibana Ryuichi) | |
略歴: |
●バイオマス利活用システムの設計と評価
オイルパーム、キャッサバ、サトウキビなどの熱帯プランテーション地域において、バイオマスの産物や残渣等を利用した自立型地域エネルギーシステムの設計、CDMなどでバイオマスエネルギーを輸入・利用する際の環境インパクト評価も可能な、バイオマス・ネットワーク設計・評価プログラムソフト「AB-NET(Asia Biomass Network Model)」を開発した。このソフトによって、EFB(オイルパームの空果房)やバガス(サトウキビの絞りかす)などの未利用バイオマスを燃焼プロセスに投入したり、加工工場廃水から大量に排出されている温室効果の高いメタンガスを回収し、発電利用等することで、工場内の電力を賄える上、地域に還元できる余剰エネルギーの推計が可能となった。
一方、国内においては、農業生産高が全国一位の愛知県東三河地域において、持続可能な社会の構築を目指し、畜産糞尿の物質フロー解析やリサイクルシステムの構築、家庭廃食用油からのBDF製造に関するLCA等の研究をしてきた。また、全国的な視点では、野菜の生産・輸送によるCO2排出量についてその変遷や土地利用面積との関係を解析した。
さらに、下水処理場から発生する下水汚泥の利用方法の違いが、地域の産業連関に与える影響を解析している。
●地産地消型緑化工技術システムの設計と評価
これまでの緑化工技術システムでは、使用する資材の大半が海外からの輸入品となっている。これは、市場原理主義(市場単価方式)に基づいたコスト抑制のためであるが、昨今の生物多様性保全を重視する現状から、今後は受け入れられない可能性が高いシステムとなっている。そこで、これまでの市場単価方式に代わる積算方法を検討する必要がある。
既存の緑化工にかかる環境負荷量の推計モデルでは、積算資料を基にした使用機械の運転にかかる排出量の算定であり、使用資材の環境負荷量は考慮されていない。しかし、これまでの研究により、実際には使用機械の運転にかかる環境負荷量よりも使用資材の製造にかかる環境負荷量が大きいことを明らかにした。そこで、緑化後の炭素固定量も推定し、緑化工技術システムの環境負荷量をトータルで設計・評価できるシステムの開発を目指している。
ここで開発される緑化工技術システムは、世界に広がる砂漠化地域の緑化現場や、東南アジアを中心に広がる熱帯プランテーションにおける再緑化地域においても十分に応用可能と考えられる。実際、基本情報のデータベースが揃えば、現地にふさわしい地産地消型で生物多様性の観点からも低環境負荷の砂漠緑化技術システムの確立も期待できる。
LCAに基づいた法面緑化工におけるライフサイクル |