萩沢 巧(Hagizawa Takumi) 材料工学専攻 |
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通電加熱法とは
通電加熱法は、金属やセラミックスを通電加熱することにより結晶を成長させる新しい結晶合成法である。これは私が所属している電気系 田・岡元研究室で開発された手法である。これまでに酸化亜鉛などの酸化物や窒化アルミニウムなどの窒化物、さらにはカーボンナノチューブを合成することに成功している。
通電加熱法による酸化タングステンの作製とフォトクロミック特性の評価
酸化タングステンはフォトクロミック現象を示すことから、表示素子や光記録材料などへの応用が進められている。
タングステン線材を通電加熱することにより、線材近傍に配置したガラス基板上に酸化タングステンの膜を堆積させた(図1)。膜は、まるで波のような膜厚分布をもつ興味ある形状であった。
図1のAおよびBの領域を走査型電子顕微鏡により観察した結果を図2に示す。
領域Aにおいては球状粒子のみが確認された。一方、領域Bにおいては多面体粒子のみが確認された。AとBの間には、球状および多面体粒子が混在していることがわかった。
Aにある球状粒子は線材の印加電圧を低くするほど小さな粒子(≤0.5µm)の数が増加することがわかった。一方、Bにある多数の多面体粒子は粒径が数百nm程度であり、電圧依存性は無かった。
これらの粒子に紫外光を照射すると、波長500〜2500 nmの反射率が低下した(図3)。これは光を照射することにより試料の色が変化する、フォトクロミック現象と呼ばれるものである。
領域Bの多面体粒子はAの球状粒子よりも顕著なフォトクロミック現象を示した。これは領域Aの粒子よりもBの粒子の方が、比表面積が大きくなったためであると考えられる。
Fig. 1. Photograph of the tungsten oxide film deposited at 3.0 V. |
Fig. 2. SEM images of the tungsten oxide crystals at the area A and B. |
Fig. 3. Relative diffuse reflectance in the area A of the film on the glass substrate in coloration. The film was deposited at 1.4 V. |