TA・RA

マウス線維芽細胞の増殖制御機構の解明

名前と所属


中谷竜の介

中谷 竜の介(Nakatani Ryunosuke)
所属:生物統合工学専攻 糖鎖生命工学研究室(古川 清教授)

学 歴:

2002年 和歌山県立星林高校 普通科 卒業
2006年 長岡技術科学大学 生物機能工学課程  卒業
2008年 長岡技術科学大学大学院 生物機能工学専攻  修了

研究内容

 我々の体を構成する全ての細胞は、その表面をタンパク質や脂質に結合した糖鎖によって覆われている。増殖した正常な細胞同士が接触すると、細胞の増殖は抑制される。これを密度依存性増殖阻害と称し、傷口の修復過程で見られるが、癌細胞では起こらない。我々は細胞表面の糖鎖がこの阻害機構に関与していると考え、正常細胞であるBalb/3T3マウス線維芽細胞を用いて密度依存性増殖阻害に細胞表面の特定の糖タンパク質糖鎖のガラクトースと、それに結合するガレクチン-3が関与していることを明らかにした。抗体を用いてガレクチン-3の局在を解析した結果、細胞の密度が高くなるとガレクチン-3が細胞表面に分泌されてくることが明らかとなった。細胞の増殖制御機構の解明を目指し、本研究では、ガレクチン-3が細胞の増殖過程でいつ、どのような機構で細胞表面に分泌されてくるのかを明らかにすることを目的とした。  緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合させたガレクチン-3をBalb/3T3細胞で発現させ、蛍光をベースにその局在性を解析したところ、細胞の密度が高くなると細胞内で作られたGFP-ガレクチン-3が細胞表面へ分泌されることを見出した。しかし、多くのガレクチン-3は細胞内に存在し、その蛍光が強く、細胞表面に分泌されたガレクチン-3を明確に解析することは困難であった。そこで、細胞膜を透過しない蛍光色素と結合できるSNAP26を融合させたガレクチン-3を細胞で発現させ、細胞表面へ分泌されたSNAP-ガレクチン-3を特異的に検出する系を確立した。その結果、細胞の密度が50%以上になると、細胞表面に蛍光が検出され、ガレクチン-3が分泌されてくることを見出した(図1)。現在、ガレクチン-3の分泌機構を明らかにするため、ガレクチン-3の分泌を誘導する物質の同定を行っている。

図1 異なる細胞密度におけるSNAP-ガレクチン-3の細胞表面における発現
30% (A),50% (B),70% (C),90% (D) 細胞密度.緑:SNAP-ガレクチン,バー:10µm.