TA・RA

動物細胞を用いた環境アセスメント法構築のための条件の最適化

名前と所属


桜井 都衣 桜井 都衣(Sakurai Kunie)
所属:生物系 神経機能工学研究室

研究内容

神経細胞の環境高感受性
ヒトの脳は1千億個を超える神経細胞で構成されている精密な回路である。私たちの生命現象に必須である脳の高次機能発現には、発達過程に起こる多くのイベントを経て神経回路が正確に形成され、維持されることが必要である(図1)。それには回路を構成する神経細胞同士、及び神経細胞の働きを支えるグリア細胞と神経細胞の間のコミュ二ケーション、また神経細胞が周囲の環境に存在する情報を正しく受け取ることが重要であると言われている。それ故、神経系の細胞は環境毒性物質をはじめとする環境因子に対しても極めて敏感であり、特に発生の時期には脳は環境毒性物質の影響を受け、脳の構造や機能に大きなダメージを受ける。このことは、逆に、神経細胞が良いバイオアッセイ系として使用出来る可能性を示唆している。そこで本研究では、培養神経細胞を用いた最適なアッセイ系の探索のための詳細な検討を行うことを目的としている。今回は、主として最適なアッセイ系の確立のための検討を行った。

これまでの成果
小脳は脳の中でも良く研究されている領域の1つであり、小脳を構成する神経細胞の種類は既に知られている。そこで、私はアッセイ系の確立のためにマウス小脳を用いた神経細胞の初代培養を試み、その細胞の様子を免疫蛍光染色による可視化及び観察を行った。マウスから小脳を取り出し、分散させて培養皿で約3週間の培養を行い、その経時的な変化を観察した結果、小脳を構成する殆ど全ての種類の細胞が正常に発達し、小脳に局在する神経細胞の特徴的な形態が観察された(図2)。このことから、初代培養法で培養した神経細胞の形態解析を用いたアッセイ系の確立が可能になると考えられる。


1 脳の発達には様々なイベントが起こる 2 初代培養を行った神経細胞(赤)