豊島 学(Toyoshima Manabu) | |
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抗体とは、主に血液中や体液中に存在し、特定のタンパク質などの分子(抗原)を認識して結合する働きをもつタンパク分子であり、脊椎動物の感染防御機構において重要な役割を担っている。
抗体は、この抗原を認識するといった生理学的特長から、さまざまな分野の研究で広く用いられており、最近では医薬品として用いられるようになり、また病気の診断や環境汚染物質の検出などにも使われている。医薬品などに用いられている抗体は、特定の抗原部位と結合する抗体(モノクローナル抗体)である。
このモノクローナル抗体の作製方法には大きく2種類あり、ハイブリドーマを作製し抗体を得る方法とファージディスプレイなどによりライブラリーから目的抗体を得る方法に分けられる。
ハイブリドーマを作製し抗体を得る方法は、抗原を免疫した動物のリンパ節や脾臓に存在する抗体産生細胞とミエローマ細胞(がん細胞の一種)を細胞融合し、抗体を産生し無限増殖する細胞(ハイブリドーマ)を作製する。この方法は、広く一般的に用いられているモノクローナル抗体作製方法であるが、抗体の作製に多大な時間(半年〜1年)と労力が必要であり、また、目的の抗体を確実に作製できるわけではない。これらの点を改良することが、モノクローナル抗体を利用する上で重要と考えられる。
我々は従来の抗体作製の方法にセル・ソーターを組み合わせる方法を考案している。
免疫した動物のリンパ節や脾臓には、目的の抗体産生細胞の他にも他の多くの抗体産生細胞があるため、目的抗体を産生するハイブリドーマを確実に作製することができない。そこで、セル・ソーターを利用することで、リンパ節や脾臓から目的抗体を産生細胞を選別し、細胞融合を行うことで、目的抗体を産生するハイブリドーマを確実に作製することができると考えている。
我々はこれまでに、神経細胞膜上に発現しているタンパク質に注目して研究を進めており、そのタンパク質の機能解析をするため抗体作製を行っている(図1)。従来の抗体作製を改変し条件検討した結果、現在では免疫から約2ヶ月でモノクローナル抗体を作製することが可能となっている。
今後、この抗体作成法にセル・ソーターを組み合わせる事で、迅速で高効率のモノクローナル抗体作製ができると期待している。
図1 神経認識分子NB-2の局在解析 |