TA・RA

細菌による天然ゴム分解機構の解明

名前と所属


高橋優信 今井俊輔(Imai Shunsuke)
微生物工学研究室

2003年:新潟県立長岡高校卒業、
2007年:東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科卒業
2009年:長岡技術科学大学大学院工学研究科生物機能工学専攻修了
2012年:長岡技術科学大学大学院工学研究科生物統合工学専攻修了予定

研究内容

天然ゴムは基本構造poly(cis-1,4-isoprene)で構成される約800 kDaを超える天然高分子で2000種以上の植物や数種の菌類により合成される。弾力性に富み、皮膜強度が高いことからタイヤやゴム手袋、カテーテルなどの原料として様々な製品に用いられてきた。また近年、天然ゴムを化石資源の代替原料とするグリーンポリマー生産の実用化を目指した研究が進められている。これと同時に天然ゴムを原料とする製品のリサイクルシステムの構築が期待されており、廃棄物となった天然ゴム由来製品を焼却処理や埋め立て処理するのではなく、低分子化して再資源化することで循環型社会の形成に寄与することができると考えられる。また、本技術の確立により、焼却処理で生じるCO2の排出も低減させることができ、現在先進諸国が直面しているCO2排出量削減問題にも貢献することが可能となる。このようなシステムの構築、実用化を図る上で期待される方法として微生物の利用が挙げられる。微生物の代謝能を利用することで省エネルギー且つ低コストな処理法を確立し、分解によって生じた分解産物を高効率で回収、利用できるようなリサイクルシステムの構築が望まれる。

天然ゴム分解菌
天然ゴムを唯一の炭素源として生育することのできるStreptomyces sp. LCIC4株は天然ゴムを含む白濁した寒天培地上でコロニー周辺にクリアーゾーンを形成する(Fig. 1)。このクリアーゾーンは菌体外に分泌された天然ゴム分解酵素によって天然ゴムが分解されたことで生成する。当研究室においてGel permeation chromatographyを用いた分解実験により、LCIC4株はpoly(cis-1,4-isoprene)を分解し、低分子化することが示されたが、分解には50日以上の長期培養が必要であることが示された。
天然ゴム分解菌
LCIC4株は天然ゴム分解酵素遺伝子であるlatex clearing protein遺伝子(lcp)を保持していることが明らかになっている。また、天然ゴムの分解において、Lcp以降の分解を担うoxiAB遺伝子も同様に保持していたことから、LCIC4株はFig. 2に示すような天然ゴム分解経路を利用して天然ゴムを分解していると推測される。

 

Fig. 1. 天然ゴム寒天培地上で生育させたLCIC4株

Fig. 2. 推定される天然ゴムの分解経路


微生物分解能を利用した天然ゴム由来製品のリサイクルシステムの構築を将来的な目標として考えた場合、現在取得されている天然ゴム分解菌の分解能は低く、そのまま用いることは困難であると考えられる。今後は天然ゴム分解菌の分解酵素遺伝子の発現を強化することによって、より高効率な天然ゴム分解菌の育種を目指す。