戸田育民(Toda Ikumi) | |
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近年、水素エネルギーの需要が高まるとともに、安価で軽量かつ大量に水素を吸蔵する材料の開発が進められている。多孔質炭素材料は直径2 nm以下のミクロ孔が発達した構造を有する水素吸蔵材料である。多孔質炭素材料の水素吸蔵量を増加させるには、このミクロ孔の容積を増大させることが重要である。本研究では、原料として廃コーヒー豆や籾殻炭に着目し、安価でミクロ孔が優先的に発達した多孔質炭素材料の合成法の開発を行った。さらに、得られた多孔質炭素材料の水素吸蔵能力の評価を行った。
Fig. 1. 多孔質炭素材料の合成と細孔構造 |
・多孔質炭素材料の開発
多孔質炭素材料は廃コーヒー豆、籾殻炭を水蒸気賦活、アルカリ賦活することにより合成される。Figure 2に示されるように現段階では、比表面積が2060 m2/g、細孔容積が1.12 cm3/g、0.6、1.1 nm付近の径の ミクロ孔が発達した多孔質炭素材料を合成することに成功している。また、ミクロ孔は黒鉛構造に由来する 細孔であると考えられる。さらに、ミクロ孔容積が全体の細孔容積に占める割合を算出したところ、最大 99%となった。これらの結果から、廃コーヒー豆、籾殻炭からミクロ孔が優先的に発達した構造を有した多孔質炭素材料の合成することに成功した。
・多孔質炭素材料の水素吸蔵特性評価
Figure 3に細孔容積に対する水素吸吸蔵量の関係プロット図を示す。廃コーヒー豆由来の多孔質炭素材料の水素吸蔵量は、室温で最大0.62 wt.%、液体窒素温度では最大4.03 wt.%であった。室温での水素吸蔵量は細孔容積の増加に対して、僅かに上昇する程度だが、77 Kでは直線的に増大した。多孔質炭素材料内のミクロ孔内の水素密度を算出すると、298 Kでは3.2-5.7 mg/cm3、77 Kでは47.4-69.6 mg/cm3であった。この値は液体水素の理論密度70.8 mg/cm3に非常に近く、この多孔質炭素材料が水素液化温度20.3 Kよりも高い温度で水素を液体に近い状態(凝集状態)で吸蔵できることがわかった。
Fig. 2. 多孔質炭素材料の細孔径分布 |
Fig. 3. 多孔質炭素材料の水素吸蔵量と吸蔵状態 |